解約・精算
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入居者用退出マニュアル配布で漏れ防止
◆退出マニュアルに手続きや費用の目安を明示
短期間で漏れなくスムーズな退出手続きができるよう、入居者向けの退出マニュアルを作成し退去が決まったら渡します。これには退去予告の方法や引っ越し当日の公共料金の精算、原状回復工事にかかる修理費用の目安などを掲載。原状回復工事に関しての業務代行、自分で行う場合、引っ越しの立会いを希望する場合などの注意事項をあらかじめお知らせしたうえで選んでいただきます。
◆オーナーにも原状回復ガイドラインの理解促進
オーナー側には、管理物件受託時に[「原状回復ガイドライン 別表3」|http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html,target=_blank]を使ってオーナーに負担区分を伝えておきます。事前に理解をしてもらっておけば、精算時に本来オーナー負担分のものを入居者との交渉で修繕費をもらった場合に感謝されます。
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入居時対応の工夫でクレームを未然に防ぐ
◆クレームは入居者からの行き場のない「S・O・S」
クレームをトラブルに発展させないできちんと対応をすれば、逆に感謝につながります。まずは慌てず、感情的にならず、5W1Hをきちんとヒアリングして記録を残す。対応する際は「大変ですね」など、相手にきちんと共感することも忘れずに。もたもたしていると2次クレームになるので、初期対応は迅速かつ的確に。当社ではCS報告書を「緊急クレーム」「修理依頼」「相談調整」の3種に分けて対応しています。
◆入居前の万全な準備で退去時のトラブル予防
まず、入居前のチェック。[入居前チェックシート|http://minahare.jpm.jp/html/service/file/document/claim_EXS_checksheet.xls,target=_blank]をもとに、入居者目線で万全にチェックを行い、きちんとその記録を残します。その後クレームが発生した場合、全員で対処方法や改善点を話し合うことでクレームは一割減りました。入居前の準備が万全でないと、退去時「最初から壊れていた」などの話になり、原状回復トラブルの原因になりがち。特に長期空室だった物件は要注意。入居者には、入居後10日以内に部屋においてあるチェックシートに「マニュアル読んだ」「部屋は傷なし」など本人が確認してサインし、返送してもらいます。これを出さないと退去時不利になる可能性があると説明すれば、返送漏れもありません。ちなみに、入居者用の確認シートは細かなチェックシ-トより、気になるところを図面に記入してもらうなどシンプルな方が粗探しにならないでいいようです。
◆契約時に丁寧な入居者指導実施
トラブルになりがちな案件の事前周知のため、入居前に入居者指導を徹底します。契約時、重要事項説明や契約とは別に、物件ごとの使用細則やトラブル対応を掲載した入居のしおりを丁寧に説明したうえで渡します。これには周辺施設の案内やゴミ出しルール、室内設備の使い方などを細かく紹介し、画鋲やフック、喫煙による壁紙の状況など使用方法の違いによるビフォーアフター写真も。言葉で説明するより写真を見せると一目瞭然、納得してもらえます。契約終了後、更に30分ほど時間がかかりますが、後々の敷金返還トラブルにもならず、知っておいてよかったと感謝されています。事故やトラブルが起きた場合、渡してあるマニュアル通りにお互い対応することができ、クレーム予防に役立っています。このおかげで、少額訴訟も滞納もゼロです。
我が社の退去時の工夫
- 立ち合いは必須の場合と、入居者やオーナーの希望を聞く場合あり
- 3月の入れ替え期は1ヶ月前予告によらず早期明け渡しの協力を賃借人に促し、明け渡し日で賃料終了とする場合も
- 退去立ち合いを実施し、賃借人の故意過失がなければ原状回復費用は敷引金より充当
- 現状回復以外に他の債務があれば、敷引金から充当
- 敷金から敷引金を差し引き、速やかに返還
- 個別に故意過失等で費用が発生した場合、追加で差引く
原状回復ルールのオーナー教育
「レンタカーでタイヤやワイパー代を払わないのと同様、家賃にも経年劣化分が含まれています」
レンタカーを2日間借りた場合、その2日間分タイヤやワイパーなども自然摩耗するかもしれないが、、故意や事故でない限り、レンタカー代以外にタイヤ代などを別途請求されることはない。部屋も全く同じ。家賃には、レンタカー代のように諸設備の経年劣化分があらかじめ含まれている。
退去立ち合い時の入居者期待値調整
「うわっ、ここは傷になってますね。ここは大きなシミ、エアコンの裏も汚れています、云々…」
「大丈夫かなぁ、敷金の中で納まるといいのですが…」
(立ち合い時、悪いところをやや大げさに指摘して期待値を下げておく)
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「なんとか敷金の中で納まりました!よかったですね!!」
(精算時、敷金が戻って来ないことに納得感があればトラブルにならない)
解約・精算に関わる事項は「賃貸住宅管理業者登録制度」における基幹業務。成約・入居に比べ、モチベーションが上がりにくく、いまだにトラブル相談が後を絶たないのも現実。トラブルになりやすい「原状回復ガイドライン」を理解するよう努め、後向きにならず、事前に準備を整えきちんと対応しよう。丁寧に対応すると喜ばれ、次の部屋探しの相談にも繋がる。出口(解約)のトラブルは入口(契約時)の問題ととらえ、業務改善にも取り組もう。
- 解約に伴う日程等の調整
- 賃貸契約終了の申出を受けた場合、解約日、物件引渡し日等、日程の調整を賃借人と行い、オーナーに報告
- 口頭ではなく、郵便やメールなど文書で受け付け、退去日を明確にしておく
- 解約理由をきちんとヒアリングしておくこと。解約理由には改善につながるヒントがある
- 明渡の確認と鍵の受領
- 鍵の受領。当初渡したオリジナルの鍵(複製した鍵でない)であることを確認
- 自転車の残置、室内・集積所の放置ゴミ、公共料金の解約、郵便物の転送、CATV、NETの解約も同時に確認
- 原状回復についての協議と実施
- 原則退去立ち合いを実施。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づく原状回復のチェック及び入居者/オーナーへの負担部分説明
- 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を何度も読み返し、理解するよう努めること
- 原状回復工事見積もり作成、入居者/オーナーの負担割合を決定し、両者に承諾をもらう
- 修繕が必要な箇所の工事発注/完了確認。工事はそのまま進められる場合と入居者に確認をとれるまで待つ場合あり。現状を保管しないとトラブルになる可能性もあるが、次の募集が遅れるリスクあり
- リノベーション等について、オーナーに提案
- 敷金等の精算
- 解約に伴う清算書の作成
- 敷金の預かり先を確認。オーナー預かりの場合はオーナー送金時に相殺
- 当該清算書に基づきオーナー送金分・修繕費等の振り分けを行う。残金がある場合は清算書に基づき賃借人に速やかに返還
- 精算不足金が発生した場合、入居者に連絡し、督促
- 敷金ゼロ物件の場合、月々の積立てや家賃にのせるなど工夫する
入居者はもちろん、オーナーも事前教育
- 「現状」ではなく「原状」回復。下記ガイドラインに基づく負担割合について、入居者はもちろん事前にオーナー教育を行っておく
- 入居時チェックシートと退去時チェックシートを突き合わせ、補修箇所を確認
- 原状回復について特約がある場合は、契約時に入居者に具体的事例を交えてきちんと説明しておく
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では賃借人に特別の負担を課す特約が成立する要件は以下の3つ
- 特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を越えた修繕等の義務を負うことを認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表明をしていること